ジェミニ杯に向けたシステムの稼働率と戦略の話
ジェミニ杯の開催が迫っている。
筆者は前回の記事で述べたようにオープンリーグの制約が気に入っている。当然今回もオープンリーグだ。
タウラス杯と同じく、ジェミニ杯オープンリーグでは評価ランクBまでのウマ娘が出走できる。
正直このレギュレーションが変わってないという確信が無かったため育成は控えていたのだが、明言されればもはや恐れるものはない。 早速育成に取り掛かり、そして難易度にビビり散らかした。
舞台は京都芝3200。 クソ長い。 長過ぎる。 カタツムリなら2泊3日。
3200mを走り切るスタミナをステータスだけで盛るのは大変なので、普通は金回復一つでスタミナいくらに換算して置き換えることだろう。
ステータスのスキルによる置き換えはオープンリーグにおいては重要だ。
あるステータスを1増やしたときの評価点の増分は、そのステータスの数字が大きいほどデカくなる。 300を301にしたときの増分はたった2だが、1000を1001にしたら5も増える。
評価点を8199に収めなければばらないオープンリーグにおいては「伸ばせば伸ばすほど効率が悪くなる」。
現実的なケースではだいたい金回復を取る方が評価点上は得するはず。
しかし、しかしだ。 絶対に忘れてはならないのが、スキルは時々発動しないということだ。
ハサミギロチンを使っても体力を3割ずつ減らさないように、回復スキルのスタミナ換算値に発動率をかけたって意味のある数字は出ない。 「スタミナ100相当、発動率70%」は「常に70相当」ではなく「だいたい100、ときどき0」なのだ。 「ときどき0」を引くと致命的な結果になる。 要するに負ける。
この金回復不発負けにどう立ち向かうかがこの記事の趣旨となる。
システムの稼働率
ここに部品があるとしよう。 部品はあるときは正常に動き、あるときは動かない。 問題なく動く確率を稼働率という。 1-稼働率は故障率だ。
システムが複数の部品からなる時、システム全体の稼働率は個々の部品の稼働率をもとに計算することができる。
これをウマ娘に当てはめてみよう。
金回復は部品だ。 スキルが発動すれば稼働していて、不発したら故障だ。 スキルの発動率がそのまま稼働率になる。
ウマ娘は金回復からなるシステムだ。 ジェミニ杯では3200mという長距離をスタミナを切らさず完走しなければならないから、これを達成していることを稼働していると言おう。 逆に、途中でスタミナを切らすことをシステムの故障にあてはめる。
ジェミニ杯は1チームに3人のウマ娘を編成して走らせる団体戦だ。 ウマ娘もまた部品で、チーム全体がシステムと見ることもできるね。 再帰的。 チームが稼働していない=故障している状態とは、誰も3200を完走できず、勝利が全く望めない辛い状況だ。
つまり、金回復の発動率を使って各ウマ娘やチーム全体の稼働率を求めることができるわけだ。
ウマ娘の稼働率
金回復を1個だけ持っていて発動すればスタミナが足りる、という状況なら話は簡単で、金回復の発動率=稼働率だ。 発動率80%なら稼働率80%。
金回復を複数持っている場合、いくつ発動すればスタミナが足りるかによって場合分けが必要になる。 典型的なのは次の2パターンだ。
複数ある金回復の全てが発動したときのみスタミナが足りる(直列)というなら、そのウマ娘の稼働率はそれぞれのスキルの発動率の総乗で求まる。確率なので掛ければ掛けるほど小さくなる。
発動率80%のスキルが2個必要なら64%、3個必要なら51%。 この数字はあまりに心もとない。 トレーニングの成功率だと思えば行きたくない数字だ。
反対に、複数あるうちの一つでも発動すればスタミナが足りる(並列)というなら、そのウマ娘の稼働率は、直列の場合と対照的に以下のように故障率の総乗を経由して求める。
発動率80%のスキルが2個あるなら=96%、3個なら99%。 いわゆる冗長化されたシステムで、安心感がある。
当然、稼働率は高いほうがいい。 とはいえ、並列のケースでは全ての金回復が発動すればスタミナが溢れることになる。 その分は本来他のステータスに回せていたはずだ。 稼働率とパフォーマンスはトレードオフの関係にある。
チームの稼働率
さて、次はチーム全体の稼働率を見ていこう。
ジェミニ杯のルールでは3人出して誰か1人が1着を取れば勝利だ。 つまりウマ娘が並列に接続されたシステムといってよい。
どのような3人を組み合わせればよいだろうか。
チームの3人全員が「金回復が2個全て発動すればスタミナが足りる」としよう。 個々の稼働率は64%なので、チーム全体ではより95%だ。 それぞれの稼働率は低い割に、チーム全体となると良さげな数字が出ている。
チームのうち1人が稼働率96%で残り2人がそれぞれ稼働率51%なら、チーム全体の稼働率はで99%。 実はこれ、残り二人の稼働率を30%まで下げても全体の稼働率はまだ98%くらいある。
注意しなければならないのが、実際の勝ち筋を特定のチームメンバーだけに依存しているようなケースでは、1着を取りうるメンバーだけで稼働率を求めなければならないこと。
上に挙げた例だと、稼働率96%のウマ娘が絶対勝てないとすると、実質的な稼働率は残り2人で計算する。 この2人がそれぞれ稼働率30%ならチーム全体でと相応に低い数字が出る。
稼働率の勝率への換算
稼働率とパフォーマンスはトレードオフにあると述べたので、稼働しているウマ娘同士では必ず稼働率の低い方が勝つという極端な仮定をおいて考えてみよう。 ただし稼働しているウマ娘は稼働していないウマ娘に勝つものとし、1人も稼働していない場合は考えない。
チームAはそれぞれ稼働率96%のウマ娘3人からなり、チームBはそれぞれ稼働率64%のウマ娘3人からなり、チームCはそれぞれ稼働率51%のウマ娘3人からなるとする。
この場合の勝ち組はチームCだ。 誰か1人でも稼働すれば絶対勝てるから、勝率はで88%あることになる。 それぞれのウマ娘の稼働率はたった51%しかないのにも関わらずである。
チームAの勝率は悲惨だ。 チームAのウマ娘は他のチームが全滅しなければ勝てないから、それぞれの故障率をかけて……1%もない。
これではあんまりなので、チームAのメンバーのうち2人だけ稼働率30%のウマ娘に入れ替えてみる。
この2人のどちらかが走れば勝てるから、チームAの勝率はこの2人からなるシステムの稼働率から求まり、その数字は51%と出た。 一転して勝ち組である。
なるほど、稼働率を犠牲にパフォーマンスを上げ続ける軍拡競争の構図が見える。 極端な場合を考えてみよう。
チームAは稼働率96%のウマ娘1人と、稼働率30%のウマ娘2人からなる。 チームBとCはそれぞれ稼働率15%のウマ娘3人からなる。
この場合の勝ち組はチームAだ。 チームBとチームCの稼働率はそれぞれたった27.1%しかないからだ。 チームBとCを並列に繋いでも故障率が38%もあるから、これをチームAの勝率としてみれば33%を超えているという理屈。
というわけで、故障率の問題で軍拡競争は崩壊する。
というわけで
今回はウマ娘の稼働率を金回復スキルの発動率で求めていた。 しかし実際には調子ガチャや掛かり、競り合い、デバフ合戦などで稼働率はもっと低くなるはず。
特にデバフ合戦。 オープンリーグにおいてデバフ役は直接戦力に数えられないので、残り2人に稼働率を依存することになる。 そしてスタミナを削るデバフは被害者から見て負の回復スキルとして考えてよく、デバフの発動率を稼働率の計算に使える。 つまり全て下がる。 ヤバい。
もしチームメンバー3人全員を「金回復が全て発動すればスタミナが足りる」ようにしてしまうと、うっかりするとチーム全体の稼働率が低くなりすぎる恐れがある。
かといって3人とも冗長性抜群にすると最大値で劣り、勝ちきれないのが怖くなる。
タウラス杯楽しかったねの書
第一回チャンピオンズミーティング、タウラス杯。
皆は楽しめたかな?
めっちゃ楽しかったよ。
楽しんだら次に何をするかといったら布教だよ布教。
人はただ事実を述べるだけの話よりも、個人の熱のこもった体験談を好む。(例: 月ノ美兎)
というわけで、布教の前段階として、まずは何が楽しかったのかについて整理してみようの記事がこれだ。
独占力
他のどのデバフでもなく、独占力だ。
アグネスタキオンやグラスワンダーが覚醒Lv3で取得可能になる金スキルで、効果は「レース終盤に後ろの方にいると前の速度を下げる」というもの。
この「レース終盤に後ろの方にいる」という条件がなかなか厄介だった。
これまで主戦場だったチームレースでは一定数の「弱いモブウマ娘」が出走している。彼女たちは非常に弱いので、脚質がなんであれ終盤は後ろの方に下がっていってしまう。すると、強いウマ娘は終盤には否応なしに順位が上がってしまい、独占力の発動条件は満たされなくなってしまう。
強い言葉を使うと、いわゆる産廃スキルの一つだったのだ。
デバフが好きなタイプの人間にはたまらない効果ではある。発動さえしてくれれば広範囲に壊滅的な被害をもたらすロマンがある。しかしいざ実戦に投入してみても馬群が真っ赤に染まる光景などさっぱり見られなかった。悔しい思いをしたトレーナーも多いだろう。私もその一人だ。
しかしこの独占力も、タウラス杯で一躍脚光を浴びることになる。
モブウマ娘が出走せず全員が十分強い環境では、終盤にちゃんと後ろを取ることができる。1度の発動でチーム全員がデバフの恩恵を受けるから効果は3倍。威力は絶大、とにかく強い。
環境に恵まれなかったこのスキル、ひいてはそれを取得可能なタキオンやグラス、カイチョーの目覚ましい活躍を見られたのがタウラス杯での一番の収穫だった。
出走制限
タウラス杯は無差別級たるグレードリーグ、そして出走制限のあるオープンリーグの2つに分かれており、私が選んだのは後者だった。
オープンリーグに出走可能なのは総合評価がB以下、つまり評価点がたかだか8199であるウマ娘だ。
この制限がめちゃんこ絶妙だった。
育成が熟れてきた平均的なトレーナーが普通に育成するとB+ができあがる。私もチームレースの編成はとっくに全員B+以上になっており、最近はAも多くなってきた。
ということは、オープンリーグ用にウマ娘を育てるなら何かしらの取捨選択が必要になる。
例えば、ステータスが700-700-700-500-500の場合の査定は6083。☆3で固有スキルがLv4なら680を加えて6763で、残り1436というのが「スキルを取る余地」になる。
円弧のマエストロなどの汎用金スキルは1個あたり508で計算されるから、このステータスだと金スキルを3個は取れない。円弧のマエストロ、一陣の風、弧線のプロフェッサーの中からどれを諦める? あるいはステータスの中からどれを削る?
しかも、俎上に上がってくるスキルの候補はこれまでと全く異なってくるときた。どんな条件でも結果を出す必要があるチームレースでは汎用スキルこそ是で、左回り◎や東京レース場◎などは見向きもされなかった。前述の独占力もそうだ。タウラス杯ではその前提がひっくり返っていて新鮮味があった。
もしもオープンリーグの制限がC+やB+だったなら話が全然違ってくる。C+ではスキルは全然取れないし、翻ってB+では余程ステータスを盛らない限り取りたいものはだいたい取れてしまう。Bだからこその取捨選択と奥深さが生まれていたように思う。
メタゲーム
タウラス杯は3人出して1人が1着を取れば勝ちだ。そして個々が発動したデバフの恩恵はチーム全員が享受できる。
必然的にデバフは流行り、その結果タウラス杯のメタゲームは面白いものになった。
デバフの中には先行ためらいなどのように特定の脚質の相手にだけ効くものが多く存在する。前述した独占力だって前方の相手にしか効かず、状況次第では不発する。オープンリーグで必要な取捨選択も当然絡んできて、全方位にデバフをばらまくのは難しい。
つまり、編成の工夫でデバフを回避したり、逆に特定の脅威を狙い撃ちしたりできたわけだ。
まずデバフの槍玉に上げられたのは逃げ・先行だった。単純に脅威であることに加え、スキルのヒントも得やすかったのも一因だろうか。自慢のエースが終盤ずるずると沈ませられる光景は実にマーベラス。
そんな中で猛威を奮ったのがゴルシを筆頭とする追込勢。とにかくゴルシが強く、私のチームでも連対率85%を叩き出すなど大変な活躍をした。当然大流行し、貴重な追込へのデバフを取得できるエアグルーヴにも注目が集まる。脱法追込こと差しウマ達も密かに活躍を遂げる。
しかしこのゲーム、根本的に前で競馬する方が強く、ガードが下がれば逃げ先行もまた活躍する。ゴルシがスパートを掛けてもクビ差届かないときの絶望感たるや。
デバフにどれだけ枠を割くかという部分も結構別れたように感じた。
単純な話、デバフを搭載したエースよりデバフにタダ乗りするエースの方が強い。自然とエースとデバフ役とで役割を分担するのが一つの定石となった。
エースの(相対的な)パフォーマンスを最大化する構成はエース1:デバフ2だが、これではエースの調子が悪かったりデバフの集中砲火を浴びたりすると総崩れになってしまう。
エース2:デバフ1の構成ならいくらか安定性を得られるため、これが人気の構成だったと思う。私が採用したのもこれだった。とはいえ下振れしないわけではなく、タウラス杯の少ない出走回数でも一方が不調で他方もブロックという展開は何度か見ることになった。
実は、耐性と安定性の面では、異なる脚質のエース3人全員で1着を狙う作戦が優れていた。決して脳筋ではないのだ。
そんなこんなで、あーでもないこーでもないと色々試してみるのは楽しかった。欲をいえば報酬無しでもいいからもっと走らせたかった。ゴルシを使いすぎたのはちょっと勿体なかったかもしれない。
布教上の課題
マジで楽しいんだよチャンピオンズミーティング。オープンリーグはいいぞ。
布教上の課題があるとすれば、評価ランクをBに抑える面倒臭さかもしれない。
ステータスとスキルから評価点への順方向への計算は簡単だが、評価点を固定してステータスやスキルを導く逆方向の計算は結構難しいし、手作業で求めるようなものではない。評価点さえ高ければいいというわけでもないのも面倒ポイント(ナップサック問題的にいえばv(i)≠w(i))。
人口を増やすためには何かしらサポートがあるといいだろう。
次回が楽しみですね
チャンピオンズミーティングは毎月開催が予告されている。
タウラスとは言うまでもなくおうし座のこと。
次はジェミニ、ふたご座だ。
……双子?
ソダシの手前変換について語らせてくれ
美しい白毛で名高いソダシだが、走りっぷりもとにかく丁寧で安定感がある。
好スタートで好位につけ、最終直線のスパートで後続を振り切る。
王道の先行脚質。
お手本のような競馬だ。
何より目立つ。
16頭立てのレースなら足は64本。その中でもソダシの足だけは容易に見分けがつく。すると特徴も見えてくる。
というわけで、素人目にもわかった範囲でソダシの走り、特に手前について語らせてほしい。
手前って何
ウマ娘から競馬に入った人は驚くところだが、競馬において左右の区別はめちゃくちゃ重要だ。人/ウマ娘と競走馬とで、左右という概念の事情は全く異なる。
人間が2本足で走るとき、左右の足の動きはちょうど半周期だけずれる。左右の均整は取れていて、区別がない。
一方、馬の全力疾走は襲歩と呼ばれる左右非対称の動きだ。2本足×2ではなく4本足×1。バランスを取るために仕方なく両足を均等に動かす人間とは異なり、対称性という枷から解き放たれている。
左右非対称ということは、同じ走り方でも鏡写しの2通りの動きが存在する。この2通りは前肢に着目して区別、呼び分けられている。
「タタッ、タタッ」という風に足が立て続けに着地するが、このとき遅れて着地する側が「手前」と呼ばれる。
「左右ッ、左右ッ」なら右手前。
「右左ッ、右左ッ」なら左手前。
実は後肢もあるので4通りなのだが、馬の場合は基本的に前肢も後肢も同じ順で動かしていて、この関係がずれるのは手前を入れ替える瞬間だけなので割愛。
さて、この左右非対称の襲歩。何度も書くが左右非対称なので、どちらの手前で走っているかで特性が異なってくる。特に重要なのは以下に上げる2つの違いだ。
- 各足にかかる負担
- 旋回しやすい方向
まず、旋回しやすい方向について。
襲歩において最も推進力に寄与しているのは反手前後肢だ。右手前で走っているときは左後肢が一番早く着地し、最も強く地面を蹴ることになる。
この推進力は対角線方向に向いていて、その直線上にある手前肢で舵をとっている。右手前なら右寄りに力が働いているので、その分をそのまま向心力にあてれば右に旋回できる。
つまり、右に回るときは右手前なのだ。逆も然り。日本の平地競走はずっと同じ方向に回るので、コースによって有利な手前と不利な手前があることになる。
続いて、各足にかかる負担だが、これも同様。
役割が異なれば負担も異なるのは明らかだ。ずっと同じ足を使っていれば次第にパフォーマンスが落ちていってしまう。
そこで、競走馬は騎手の指示で手前を交換できるように調教されている。特に最後の直線では手前を入れ替え、温存していた側の足でスパートを掛けるのが定石だ。
ソダシの再加速
まずはレース映像を見てくれ。
最終直線、抜け出したソダシは左手前。
残り50mくらいのタイミングで今度は右手前に変え再加速。
外から迫るサトノレイナスを振り切り勝利している。
直線の最後に更に伸びて押し切るのは必殺技という趣があってカッコいいね。
だが待ってほしい、右手前である。
見ての通り走っているのは右回りのコース。散々使って疲れるはずの右手前に変えた途端、なぜかギュンという音が聞こえるくらい伸びてるのである。
あれーっ!?
桜花賞のコース
コースによって有利な手前があることは前述した。
そこでまずはこの日使われた阪神競馬場、芝外回り1600mについて見ておく。
ここからはJRAのコース紹介を見ながら話をすすめる。
だいぶ歪だが、コースは基本的に角丸の長方形だと捉える。
スタンドのある側の直線がホームストレッチ、反対側がバックストレッチ(=向こう正面)。
ゴール板から進行方向に数えて順に1コーナー、2コーナー、3コーナー、4コーナー。
桜花賞は芝外回り1600mなので、バックストレッチの半ばくらいからスタート。
直後の分岐はまっすぐ進んで外側のコースに入る。
ぐるっと3コーナーと4コーナーを回って最終直線、ゴール。
ずっと長くゆるい弧を描く「つ」の字のようにも見えるが、3コーナーと4コーナーの間はかなりRが大きく、「コ」の字の雰囲気も見出だせる。最終直線に入るところはカクっと折れているね。
レース映像ではわかりにくいが、ゴール前の残り200mから1.9mも登る、勾配1.5%の急坂も特徴だ。
なお、2021年の阪神競馬場はこの週からBコースを使用している。つまり内側の柵が外側に若干移動し、内ラチ側まで芝の状態がめちゃくちゃ良い。
ソダシの手前変換
コースを踏まえた上で、次はソダシが手前をどう変えていったかを追ってみる。
好スタートを決めたソダシは最初は左手前。他のレースの映像を見てもスタートは必ず左手前で出ているから、利き足なのかもしれない。
200mくらい走り前の方に位置を確立すると早々に右手前に切り替え。そのまま3コーナー、800mと通過している。
後半戦、そのまま右手前を維持しても良さそうなところだが、ソダシはここで一旦左手前に切り替えている。
当然4コーナーを曲がるときには右手前に戻さなければならない。ソダシが手前を戻したのは600mの標識を過ぎた直後。
その後4コーナーを曲がり切りホームストレッチに入ると、基本通り左手前に。ストゥーティとジネストラの間を割って抜け出しスパートを掛ける。
勢い任せにゴール手前の激坂を登り切ると、今度はまた右手前に切り替えてダメ押しの加速、という流れで押し切っている。
というわけで、ざっくりそれぞれの手前で走っていた距離を概算すると800と800くらい。なるほど距離の上では両方の足を同じだけ使っていたというわけだ。
気になるのは4コーナー手前で少しだけ左手前を使っていることだ。スパートのために温存しているはずのものをどうしてこの場所で少しだけ使っているのか。この謎が最後の伸びにも関係しているかもしれない。
まず思いつくのは、右手前で走るのに疲れたからという単純な理由だ。その根拠を今年の桜花賞のペースに求めてみよう。
200mごと8区間に分けたラップタイムを、比較的タイムの近い2019年の桜花賞と並べるとこうなる。
2019年 | 12.2 | 11.1 | 12.1 | 12.3 | 11.7 | 10.8 | 11.0 | 11.5 |
2021年 | 12.1 | 10.8 | 11.2 | 11.1 | 11.6 | 11.2 | 11.2 | 11.9 |
2019年の桜花賞もグランアレグリアがレコードを出していたのだが、見比べると今年は前半が速い消耗戦のようだ。
特にラップタイムに差があるのは3番目、4番目の区間。この辺は3コーナー前後にあたり、ずっと曲線なので右手前で走るしか無い。道中長く使いたいはずの足がゴリゴリに消費されて大変しんどいはず。
一般に、ハイペースの展開では先行組が崩れやすいと言われている。今回の結果を見ても、コーナーを好位で回っていたストゥーティやジネストラ、ヨカヨカなどは失速し掲示板外。残ったのはソダシだけだった。超高速馬場であったとは言われているものの、実情としてハイペースだったのは間違いない。
そこで例の区間だ。
Rが十分大きい弧の一部分だけを切り取ると、ほとんど直線のように捉えることができる。ゆるい弧を描き続けているように見える外コースの曲線は、実はずっと回り続ける必要はない。4コーナー側ほどその傾向が強く、ちょうど中間地点を過ぎたこの場所にも直線を見出すことができる。つまり、ここは手前を逆にして走れるのだ。
ここだけが苦しい足を休めることのできた唯一の区間だったはずだ。ようやくラップタイムが緩んでくれたタイミングであり、600の標識を過ぎればまた忙しくなってしまう。ソダシ/吉田騎手はこの機を見逃さず、さりげなく小休憩を取っていたのだ。天才か~?
この小休憩のために道中で左手前を使いすぎたのかというと、そういう訳でもないらしい。
最終直線で抜け出した勢いのままゴール前の激坂を登るソダシの足取りは力強く、近くで追っていたはずのストゥーティやアカイトリノムスメを突き放さんばかりだ。ソダシにはまだ余裕がある。サトノレイナスを除けばこの時点で勝負ありといった状況だった。
そう、外からはサトノレイナスが飛んできている。
いくら力強くとも坂では否応なしに減速している。ここから粘るためにはもう一押しできる足が必要なのだ。そのために温めていたものこそ必殺の右手前だった。
実は4着のアカイトリノムスメもまた、このタイミングで手前を変え再加速を図っていた。ソダシとアカイトリノムスメ、2頭の違いは正面から映したパトロールビデオから見えてくる。
残り200mで失速してしまったアカイトリノムスメは一度左によれている。不慣れな阪神、坂でバテてしまったのは仕方がない。だが、登りきって右手前に切り替えた途端、今度は逆に右へとぐいぐいと斜行してしまっている。よれるのは疲労で舵取りが覚束ない証。アカイトリノムスメも断じて能力が無い馬ではないが、過酷な道中での小休憩の有無が最後の一伸びに影響したとは考えられないだろうか。
ゴール板までまっすぐ走り抜いたソダシの姿を以て、勝因はうまく手前を切り替えて両方の足を使えたことにあった、と私は結論付けたい。
終わりに
ここまでソダシの手前変換について語ってきた。
こうしてみると、楽しみになってくるのはオークスだ。
オークスこと優駿牝馬は東京競馬場で行われる。桜花賞との違いは2400mという距離だけでなく、左回り、そして特徴的な起伏もだ。
半年前のアルテミスSからどれだけ成長したか、手前という視点からも見てみると面白いだろう。
奇しくも目下最大のライバルの名は女王たち。マイルが短すぎた刺客たちもようやく参戦する。血統不安や逆張りを払い除け、勝って力を示せるか。ソダシの挑戦に期待したい。
えっ、サトノレイナスがダービー匂わせ?
ソダシも登録はしてる?
やだやだ! オークスで戦ってくれなきゃやだー!
ストリーム・エチケット日本語訳
この文書はClipping Tools and Guidesのある1ページの非公式の日本語訳です。2020/01/25 12:42閲覧。原文はlaeによってMITライセンスでライセンスされ、GitHub - idolactivities/vtuber-things: Tools to help create subtitles and clipsで管理されています。
原文は非日本語話者、特に英語話者が他言語でのVtuberのライブ配信を見る際の心構えについて書かれたものです。内容の多くは日本語話者が日本語での配信を視聴する場合であっても通用するため、英語を読むのが苦手な方に向けてこれの日本語訳を共有します。
以下翻訳。
ストリーム・エチケット
もしあなたが日本語(訳注: 原文英語話者における外国語)や他のあなたの話せない言語でのVtuberのライブ配信を見るとき、これらのことを頭にいれておこう。
手短に
- 常識を弁えよう
- 礼儀を身に着けよう
もう少し言うと
- 常識を弁えよう
- 礼儀を身に着けよう
- 仮に配信者にあなたの言葉が通じたとしても、なにかしろとせがんではいけない。
- 脱線しない。配信者のチャット欄は自分語りの場でも他のVtuberを語る場でもない。
- スパムはやめよう。
長いバージョン
あなたがちゃんとできる限り、一番短いバージョンに書いてあることが全てだ。 でももう少し言葉を尽くしてもいい点がいくつか。
補足: 「中の人」
ぶっちゃけ、Vtuberというのは実在の人間が架空のキャラクターを演じてる。 詮索したくなるのもわかるよ。 でもVtuberが詳細を公開してないなら、詮索しないでくれ。 それはプライバシーの侵害だ。
もう一つ、「5chではこの情報が発掘されてたけど」っていうのは「公開されてる」とは言わない(訳注: 2chあるいはその他全てについて同じ)。 その情報が直接そのVtuber本人(訳注: 中の人ではない!)からもたらされたのでない限りそれは晒しだ。 大多数のVtuberはネット上での他の身上(訳注: いわゆる前世や裏垢)を公けにしておらず、私的な情報はなおさら、ということだけは知っておいてくれ。
結局、配信者とはどうコミュニケーションをとればいいの?
丁寧に、スパムしたりねだったりしないこと。チャットにいる親切な人があなたのために翻訳してくれるかもしれない。 チャットに翻訳者がいないことはありうるし、いたとしても、ライブ配信の視聴に集中していてあなたのために翻訳はできないこともある、というのは忘れてはならない。
配信者が簡単な英語のフレーズだけなら理解できることもある。 もし「かわいい」だとか「かっこいい」だとか「ナイスぅ!」だとかを伝えたいだけなら、それはきっと通じるだろう。
とにかく、配信者は芸を覚えた猿ではないんだ。 これは全ての配信者についていえることだ、Vtuberだけではないぞ。 あなたの楽しみのためにああ言えあれしろとせがまないでくれ。
もし配信者に言ってることが通じないとして、なんで自分は話から脱線してちゃ駄目なのさ?
話題からそれないでいてくれると、英語話者である他の視聴者にとっていい環境になるからだ。
もし誰かがライブチャットのROMだったりアーカイブを見てたりするとして、他の英語話者が、お昼に何食べたとか昨日Apexしたぜとかではなく、配信中に何が起きたかについて話してたり楽しんでたりするというのはとても良い体験になる。
一方で、皆がチャットをTwitterみたいに使ったりミームを垂れ流すのに使ったりしているのを他の視聴者が見たら、自分もやっていいものだと思ってしまうだろう。 これは配信者にとってもチャットにいる他の皆にとっても楽しみを損なうものだ。
話題に沿ったチャットというのは配信で何してるのか追いたい視聴者の助けにもなる。 日本語チョットデキル視聴者が配信中の出来事についてコメントすると、日本語未履修の視聴者はそのリアクションを頼りに配信をもっと楽しむことができるかもしれない。
脈絡なく他の配信者について語り始めるのもめちゃくちゃ失礼なことだ。 今画面に映っている配信者にまず失礼だし、誰かが他の配信者について語りたいなら、その人はそこではなくその配信者のライブチャットにいるだろう。
配信者によっては配信後にアーカイブを確認していて詳細なチャットを読み返せることにも言及しておきたい。 もしかしたら他言語のコメントを読むためにGoogle翻訳を持ち出したりするかもしれない。 配信中にコメントをGoogle翻訳するために配信者が止まるのも見たことがある。 それも頭に入れてチャットしよう。
ミームについての注記
ミームは楽しいし皆好きだけど、英語圏で通じるミームは日本語圏でも通用するとは限らないというのは忘れないでおこう。 その配信者のある瞬間が英語圏の視聴者層の中で有名になることもあるが、日本人の視聴者層や配信者自身にとっては大して記憶に残るようなものではないかもしれない。 もちろん逆もしかり。
そういうわけで、たとえVtuberに関係するミームであっても、それが全く通じなかったとて驚くことではない。 翻訳していても同じこと。 そのメッセージはともすればスパムとして扱われるだろう。 つまり meme responsibly (訳注: こういう警句なんだと思う)。
他に英語話者は?
他にだれも同じ言葉を喋っていないと寂しくなるのはわかるよ。 だから簡潔に「英語話せる人いない?」と配信前や開始直後にきくのは申し分ない。
これはスパムしろという意味ではない。「英語話せる人挙手!!!!!」だとか「英語を話せるのは俺だけかよ!?!?!?!?」だとか「LOL I DON’T READ MOON」(訳注: 翻訳できなかった)だとか「英語話してクレメンス」だとかそういう意味でもない。
もし配信中で他の人が英語でチャットしているの見かけたら、つまり他に英語話者がいるということ。きくまでもない。 もし誰も英語で話してないなら、ROMになってもいいし、英語で話し始めるファーストペンギンになってもいい。 そしたら他の人も一緒に話してくれるかも。
要するに…
「ああするな」「こうするな」と羅列したように見えると思うが、繰り返し言うと、全て常識と礼儀だ。 配信に参加するためのルールブックを暗記する必要なんてない。 ちゃんとした人間であるだけでいい。
あなたの言っていることのほとんどが配信者に通じなかったとしても、彼らは誰がスパムで誰が本当に来てくれた人なのかはだいたいわかる。 応援するのを表現したいなら、自分が楽しんでることを示してくれ。 ――さあ! チャットで楽しみ、一緒に笑い、一緒に応援して、そして配信を楽しもう。